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新しい本寄付講座

「みんなでつくる未来の本」プロジェクト発足記念フォーラム(第1回)レポート

渡邉英徳教授の資料より

2023年10月26日に「みんなでつくる未来の本」プロジェクトの発足を祝うフォーラムが大盛況のうちに催されました.

フォーラム内で,「未来の本」の可能性について,以下の7名が討論しました.

・ 小松尚平(東京大学学際情報学府院生)

・ 鈴木親彦(群馬県立女子大学准教授)

・ 冨田萌衣(東京大学教養学部学生)

・ 長尾洋一郎(講談社KODANSHA techゼネラルネージャー)

・ 原田真喜子(東京大学特任研究員)

・ 樋口恭介(作家、東京大学客員准教授)

・ 渡邉英徳(東京大学教授):司会

パネリスト7名


当日の議論内容をもとに,生成系AI ChatGPTがまとめたレポートを少しだけ,人間の手によって修正したものを記載します.

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このプロジェクトは、作家、AI、そして読者が一緒になって新しい書籍を創り出すという革命的な取り組みです。作家性、出版とサービスの融合、新たな概念体系、AI生成物に対する人間の需要など,先進的な取り組みが盛り込まれています。初のAI学習対象作家として、樋口先生が選ばれました。


主な議論ポイント

- 新しい物語の創造とIoTデバイス

樋口先生のプレゼンは「モノたちの物語」として、IoTデバイスとジェネラティブAIの組み合わせを中心に議論を進めました。これにより、人間ではない視点や思考からの物語が生まれる可能性について考察されました。

- 生成AIとアーティストの共創

アーティストとAIの共同作業や、AIを使用したメンタルヘルスメタバースの応用が話題となりました。アーティストが自分で気づかなかった作品の特徴をAIが明らかにする可能性や、AIが人の手の描写に難しさを感じる理由、さらにはAIの表現を追求するための方法論など、多岐にわたるテーマが議論されました。

- 生成AIの技術的議論と応用

LLM(Large Language Model)の応用やその技術的限界、計算量やGPUの問題、そしてカナリアリリースといったテーマに関しても深く議論されました。特に、生成AIの差別化やデフォルメ、文章の抽象化などのテーマは、今後の研究の方向性として注目されました。

- 未来の本とその流通

紙の本とデジタルの本の流通は現時点で大差は感じられないものの、生成AIの時代に入ることで書き手と読み手の関係が多様化しています。特に、出版社と著者の関係が変わること、そして出版社が知的財産(IP)としての立場を強化する可能性が考察されました。

- 出版と生成AI

出版業界において、生成AIが文章やイラストを生み出す場合、その著作権や利益配分は複雑になります。しかし、それとは別に流通の方法が大きく変わるわけではないかもしれません。例えば、今でもオンデマンド印刷やデジタル配信が行われていますが、それらは流通の一部として取り入れられています。

- Blackbird セッション: 「偽」の概念と生成AI

ウンベルト・エーコやジャン=クロード・カリエールの「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」を引用しつつ、「偽」の概念を探求。AIが生み出す情報は人間の模倣として考えることができるが、それが持つ魅力についての議論が展開されました。さらに、AI自体の紋切り型や内省、そして「偽」情報の累積による文脈や情報の真義についても検討が加えられました。

冨田氏の資料より

- パブリッシャーと知的財産

パブリッシャーの役割は、クリエイターから預かった知財の商品価値を最大化することであり、インハウスの活用が中心であるとの報告がありました。今後の展望としては、ライセンスビジネスへのシフト、特に生成AIの人格を商品として売り出す可能性についても触れられました。  

長尾氏の資料より

- 出版業界の未来

パブリッシャーの役割に関してのセッションでは、現代の出版業界の変遷と、生成AIがもたらすであろう影響についての議論がなされました。特に、パブリッシャーがIPの保持者ではない現状と、将来的なライセンスビジネスの可能性、さらには生成AI人格の商業的活用についての見解が共有されました。

- AI生成物に対する人間の許容

プログラミングコード生成におけるChatGPTの限界や整合性の問題について深い議論が交わされました。人間の介入や教育的側面からのアプローチによって、これらの問題をどのように克服できるのかについての意見交換が行われました。人間を模倣したものは受け入れられ難いが,人間性を完全に排除したものについては、新たな関係性が生まれるかもしれません。

- 東京大学制作展

最後に、東京大学制作展の紹介があり、「情報との出会い方をデザインする」というテーマでレシートにAI小説が刻まれる作品が解説されました。新たなデバイスを提案する作品は、小説の新しい展開方法を提示する議論に発展しました。

- 総評

今回のイベントでは、未来の出版やコンテンツ生成に関するさまざまな議論が交わされました。生成AIの可能性とその影響を真摯に考察することで、新たな価値創出の方向性を模索する試みが行われました。このプロジェクトは、多くの可能性と課題を孕んでおり、今後の展開が非常に楽しみです。

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フォーラムでは,AI小説を起点に,作家性,技術,出版,流通,教育,そして哲学的要素を纏いながらさまざまな議論が交わされました.

「未来の常識を作る/未来の非常識を作る」パネリストによる課題提起と討論が,参加者全員にとって新しい視点や考察のきっかけとなり,AIと小説と人類の共創関係を深める場となっていましたら嬉しく思います.